文部科学省の所管にある日本学術振興会が行う「科学研究費助成事業」では、毎年全国の研究者から公募を募る形で、研究資金の援助を行っています。ここで交付される研究助成金が「科研費」と呼ばれているもの。政府として研究者を支援することで、日本全体の研究活動を盛り立て、日本の科学技術の向上をめざすための取り組みです。
支援する研究は研究規模や研究テーマによって非常に細かく区分されていますが、大切なのは“研究者の自由な発想に基づいて行われる「学術研究」に限られる”ことで、これはあらゆる研究の土台となる「学術研究」の支援を通して広く科学技術の発展を目的としているからです。なお、対象となる研究者は大学に所属している教員たちが中心となっています。つまり科研費に採択されている研究は最先端の研究でありながら、その教員のもとで学ぶことになれば学生として関わることができる研究でもあります。幾多の分野にわたる科研費に採択された研究の数々。その中から自分の興味や好奇心を掻き立てるものを見つけることができれば、その出会いはきっと、充実した4年間を過ごすことのできる大学を選ぶための大きな指針となることでしょう。

※科学研究費のうち「特別推進研究」(研究領域提案型)(一部を除く)、「基盤研究」(特設分野研究を除く)、「挑戦的萌芽研究」、「挑戦的研究」、「若手研究」、「研究活動スタート支援」の総数
審査

科研費の審査は、書面審査と合議審査で行う「総合審査」と、書面審査を2回行う「2段階書面審査」の2つの方式によって行われています。審査を行うのは多様な分野のスペシャリストである7000人以上の研究者たち。専門家の厳正な審査を通過しているからこそ、科研費に採択された研究は、社会的に高い評価を得ているのです。

社会へのインパクト

ノーベル賞を受賞したオートファジーや発光ダイオード(LED)、ニュートリノなども、科研費の対象となっていた研究でした。科研費の対象となる研究は、すぐさま結果を期待するものではなく、長期計画として行われているものが多く、将来的に社会や人々の暮らしを大きく変革する可能性が秘められています。

領域

対象となる研究領域は詳細に300以上の細目に区分されています。その内容は、芸術や歴史、社会学、経学といったいわゆる「文系」のものから、数学や工学、農学、医学といった「理系」のものまであらゆる学問をカバー。科学技術の発展や時代の変化に合わせて、研究領域の区分も常に見直しが繰り返されています

採択数

平成29年度には、主要科目※において約10万1000件の新規応募があり、うち約2万5000件が採択されました。すでに採択されている研究と合わせると、支援を受けている研究は約7万6000件にも及びます。

大学との関わり

科研費の応募資格を有する28万4320人の研究者(平成29年11月時点)のうち、約8割の研究者が国公立もしくは私立大学に所属しています。その研究のなかには大学生・大学院生が関わっているものも決して少なくありません。科研費の研究は、高校生のみなさんの手の届くところに存在する最先端の研究なのです。

若手研究者

実績を積み重ねた研究者だけでなく、若い研究人材のステップアップを目的とした、原則学位の取得後8年未満の研究者だけが応募できる「若手研究「」研究スタート支援」といった研究種目も設定されています。ここで実績を積み重ねた研究者は、次なる「基盤研究」へと研究種目を移し、さらなる研究の発展をめざしていきます。

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